レイテアスの呪術器
[レイテアスノジュジュツキ]
クユフ・レイテアスによって作られた呪術器。使用者の相手への負の感情を媒介として、相手の力を封印する呪いをかける。狼系獣人のゾルフ族誕生の発端となったと言われている。
呪いの代償
魔法士であったクユフは呪術を用いる際に代償となる物について研究を進めていた。呪いの強さはその代償となる物の大きさに左右されるが、例えば自らの生命をかけた呪いは強い力を持つが、それによって自分の命が奪われてしまうのでは本末転倒ではないかと考えた。クユフが失っても影響のない物を呪いの代償として考え、注目したのが感情である。しかも呪術相手に向けた負の感情を使えば、相手への恨みを果たすと同時に自分が抱えている感情を抑えることができるので一石二鳥であると考えたのだった。
こうして作り出したのがレイテアスの呪術器である。呪術器は予定通りの効果を発揮し、クユフはその結果に満足する。
しかし、この呪術器を使用した物が次々に自ら命を絶つという事件が起こる。クユフがその原因を調べると負の感情を吸い取ることが原因であることが判った。
この呪術器を使うと相手へ抱いていた負の感情がなくなってしまうため、使用後にどうして自分が呪術器を使ってしまったのかが判らなくなってしまう。その目の前に苦しむ相手が現れると後悔の念に駆られてしまい、最悪の場合、自ら命を絶ってしまうという循環に陥ってしまうのだった。
このことに気がついた、クユフは呪術器を作ったこと自体を後悔すると、レイテアスの呪術器を回収し、誰の眼にも触れないように隠し持つことにする。
盗まれた呪術器
ゴミロ・シホウがレイテアスの呪術器の噂を聞いたのは偶然だった。断片的に聞いた話で金になると考えたゴミロはクユフからその呪術器を盗むことを考える。夜中にクユフの家に入り込んだゴミロは呪術器を盗むと、すぐに見つからないように人があまり立ち寄らない獣人の住処の近くでほとぼりが醒めるのを待つことにする。
しかし、その時にゾルフ・ルフに見つかる。珍しく見かけた人をいたずら心からゾルフは驚かそうとして背後から大きな声で吠えた。
盗みをしたことで怯えていたゴミロにとってその吠え声は恐怖心をあおるのに十分であった。そして、その恐怖心が媒介となり、呪術器の力が発動してしまう。その力はゾルフに向けられ、獣人としての力の源となる獣の力を封じ込められる人化の呪いがかけられてしまう。恐怖心が無くなったことで、現状を理解したゴミロだったがなす術は無く後悔の念に駆られている。
ゾルフは呪いに悲観し自ら命を絶とうとして、右耳の後ろから首にかけて自分の爪を立てるとその傷口が光り輝き呪いの進行が止まったといわれている。
その後の行方
これ以降、レイテアスの呪術器についての記録は残されていない。ある説ではゾルフ族の誕生を語る物語は作られた物でそもそもレイテアスの呪術器は存在しなかったといわれ、またある説では呪いの力を止めたのは、ゴミロの後悔の念を媒介として呪術器が作動した結果で、本来は不幸をもたらす呪いが逆の形になって現れたことによって呪術器が壊れてしまったなどといわれることもある。ゴミロが後にひっそりと売って大金を手にした、クユフが回収して隠したという噂も残されてはいるが、いずれも確証となるものは出てきていない。
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