黒目の王冠
[コクモクノオウカン]
黒色の宝玉をあしらえた冠。テムピリアのジホシジの権力者カオ・ナルノが自身の権力を誇示するために作らせた冠。たびたび盗難にあうが、その都度見つかることから戻りの冠と呼ばれることもあった。権力の象徴
統一暦975年にテムピリアのジホシジの権力者であったカオが自身の権力を誇示するために作らせた冠。テムピリアの王が公の行事でかぶる冠を見て、それ以上の物を作ることを思いつく。当時、最高級とされる黒色の宝玉を探し出し、それを中央に添えている。造形に関しても、カオが積極的に関与しており、全体的な調和よりも黒色の宝玉が前面に出ている作りになっている。そのため、最高級の黒色の宝玉が使われているために金銭的な価値は高かったが、ただそれだけで、細工が凝られているわけでもなく、全体的な調和が優れているわけでもなかったために、美術品としての価値はないに等しいと言われている。
田舎者の権力者が作りそうな物と酷評されることもあった。
戻りの冠
美術的な価値や周囲の評価は別として、金銭的な価値としては十分な価値を持っていた黒目の王冠はたびたび盗難にあう。最初に盗難にあったのが統一暦977年のことである。カオ自身としては満足がいく出来を誇った冠であり、最初はそれなりに評価をされていた。しかし、時を得るごとに周囲の評判が悪くなっていくのを耳にしたカオは、段々と冠に対して興味を失っていく。一時期は売却も考えたようだったが、さすがにそれは思いとどまり、倉庫に片付けられてしまう。盗まれたのはその直後である。カオは盗まれたことに全く気がつかなかった。
発覚したのは別件で捕まった盗賊が所持していたからである。カオは盗まれたままでも良かったと思っていたのだが、取り戻せたことに一応喜びの顔を見せた。
それ以後も、2、3年に1度盗まれるが、その度にカオの元へと戻されていく。盗難事件の中には、後に嘘師と呼ばれる軍術師モイ・ラモが犯人と疑われる事件もあった。
こういった事件が続く中で必ず戻ることから戻りの冠と呼ばれることになった。
なぜ、頻繁に盗まれたのか。この謎に対してはある噂が語られている。カオの執事ワサ・マーユーがその手引きをしたのではないかと言われている。
ワサはカオが黒目の王冠をわずらわしいと思っていたことを知っていたので、対面を保ったまま、処分するために画策したのではないかというのではないかというものである。
実際に、警備を厳重にしたりすることもなかったから、何らしか関わりがあったのではないかとも言われているが、確たる証拠があるわけではない。
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